精神科訪問看護で実践する家族“まるごと”支援

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精神疾患の支援は、「本人だけ」で十分なのか――

精神科訪問看護の現場から見えてきた
家族を“まるごと”支えるという視点

近年、うつ病や統合失調症をはじめとした精神疾患の治療は、昔のように入院して病院で行うのではなく、在宅、つまり患者は自宅で日常生活を送りながら治療を行うのが主流となっています。
病室という閉じられた空間ではなく、住み慣れた場所で暮らしを続け、社会と関わり続けるなかで精神疾患を治療することには意義があります。しかし一方で、これまで見えにくかった精神疾患特有の問題も浮かび上がっています。それは、精神疾患の患者を本当に治療するのであれば、その家族についてもケアが必要だということです。
精神疾患患者は日々の暮らしのなかで、特に家族に対して多くの負担を強いてしまっていることが少なくありません。配偶者やきょうだい、年老いた親、そして子どもたち――こうした家族は、本人の回復を支える欠かせない存在であるにもかかわらず、治療中は患者によって傷つけられたり、苦しめられたりしてしまうことがほとんどです。
しかし治療中、家族が医療や行政からの支援を受けられることは少なく、多くの家庭が患者とともに病に苦しめられています。
例えば、精神疾患を患う一人親の子どもが、誰にも頼ることができず、親とともにつらい毎日を送っていれば、その状況そのものが患者に悪影響を及ぼし、病状はますます悪くなります。反対に子どもが笑顔になれる時間が増えれば、それは治療にプラスになります。つまり、家族をケアすることが患者の治療につながる、というのが精神疾患特有の問題なのです。
そこで著者が取り組んできたのが、本人だけでなく、その家族もまるごと支えるケアでした。
本書の著者は、20年以上にわたり精神科訪問看護の現場に立ち続けてきた看護師です。診察室にいるだけでは決して見えてこない、家庭のなかの現実を数え切れないほど目にしてきました。数多くの家庭を看るなかで、著者がとりわけ支援の必要性を強く感じてきたのが、精神疾患を抱えながら子どもを育てる母親と、その子どもたちでした。
本書では、精神疾患を抱える母親がいる家庭で実際に何が起きているのかを、具体的な事例とともに紹介します。さらに、親と子を同時に支えるグループワーク「PCG(Parent Child Group)」や、子どもの育ちを中心に家族全体を見つめる「LTC(Let's Talk About Children)」など、家族への具体的な支援のあり方についても取り上げます。
病気を抱える本人だけでなく、その周囲にいる家族にも必要な支援を届けるために、何ができるのか。精神科医療や訪問看護、児童福祉、教育、行政に携わる人はもちろん、家族のことで悩みを抱える人にとっても、「家族をまるごと支える」とはどういうことかを考えるきっかけとなる一冊です。

精神科訪問看護の現場に20年以上立ち続けた著者が語る利用者だけでなく家族ごと支えるケアの実践。

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